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コンクリート建築物のひび割れの種類と原因

ひび割れが生じる原因には様々なものがあり、その原因とひび割れの程度によって現状問題が生じないのか、即対応が必要なものなのか判別することができます。コンクリートに生じるひび割れを大きく分けると「進行性のないもの」と「進行性のもの」に二分できます。進行性のひび割れは、様々な原因によってコンクリート自体が劣化していくため、時間とともにひび割れ幅は拡大し、鉄筋の腐蝕とともに構造物の性能は低下していってしまいます。放置しているとひび割れの進行によってコンクリート強度の低下や鉄筋の破断、ついにはコンクリート部材の崩壊に至ってしまう可能性もありますので、注意が必要です。

コンクリートに生じるひび割れの種類と原因

★乾燥収縮によるひび割れ コンクリート打設後、時間の経過とともにコンクリート中の水は乾燥によって蒸発します。するとコンクリートの体積は減少し、結果として収縮します。コンクリートが自由に変形できる状態にあるときは、コンクリートにひび割れは起きません。しかしコンクリート構造物のように、鉄筋や柱、梁、壁などの部材によってコンクリートの縮みが起きないように抑えられると、コンクリートには引張力が生じます。この引張力がコンクリートの引張強度を超過すると、ひび割れが発生します。このひび割れが乾燥収縮ひび割れです。

★セメントの水和熱によるひび割れ コンクリートはセメントと水の水和反応によって硬化します。このとき水和熱が発生してコンクリートの温度が上昇します。コンクリート温度が最高点に達した後、外気温程度に温度降下するまでには数か月程度かかることもあります。この間、コンクリートには温度上昇に伴う膨張、温度降下に伴う収縮といった体積変化が起こり、自由に収縮できない状況では引張応力が発生し、コンクリートの引張強度以上となると、温度ひび割れが発生して応力が解放されます。このひび割れが水和熱によるひび割れです。

★コンクリートの沈下、ブリーディングによるひび割れ ブリーディングに伴う沈下が鉄筋などによって拘束されると、その上面にひび割れが生じます。これを沈みひび割れといい、ブリーディング量が多いコンクリートほど発生しやすいです。ブリーディングとは、打込み後のコンクリートでは骨材やセメント粒子が沈降し、水は比較的軽い微細な物質を伴って上昇します。水が上昇するこの現象をブリーディングといいます。

★型枠のはらみ、支保工の沈下によるひび割れ フレッシュコンクリートは液状化しており、型枠に液圧に近い圧力を及ぼします。特に温度が低い環境下、打設速度が速い施工時には、型枠に与える側圧は大きくなります。その時、型枠がはらみ、ひび割れが生じます。

★環境温度、湿度の変化によるひび割れ コンクリートは温度が上昇すれば膨張し、低くなれば収縮します。また吸水すれば膨張し乾燥すれば収縮します。環境の温度や湿度が変化することによりコンクリートが膨張・収縮し、ひび割れが発生します。

荷重、構造物の不同沈下によるひび割れ 地盤の一部が沈下し構造物に沈下する部分としない部分ができると構造物が強制的に変形させられ、長さが長くなる方向に引張力が生じ、引張力に直角方向のひび割れが発生することがあります。このひび割れの特徴は、ひび割れの向きが同じになることです。

コンクリートの劣化から生じるひび割れ

★アルカリ骨材反応によるひび割れ 反応生成物(アルカリ・シリカゲル)の生成や吸水に伴う膨張によってコンクリートにひび割れが発生する現象です。

★凍結融解作用によるひび割れ コンクリート中の水分が凍結し、体積が膨張することによって引き起こされます。体積が膨張する際に、その圧力の逃げ場があればコンクリートに作用する圧力は緩和されます。しかし周囲が安全に拘束されている場合は圧力が直接、コンクリートに作用します。この圧力が引張強度に達したときにコンクリートが耐え切れなくなり、ひび割れという形で発生します。コンクリート内部の水分が凍結しても一度だけでは大きな損傷には至りません。凍結と融解が繰り返されることで徐々に劣化が進行していきます。そのため、凍結融解作用によって引き起こされるひび割れは、『凍結が起こる冬期から春期に多く発生する』『凍結と融解が原因なので昼夜の温度差が大きいほど発生しやすくなる』『寒冷地では南側に面しているコンクリートに発生することが多くなる』等、ある程度条件が限定されます。

★コンクリートの中性化によるひび割れ コンクリートは硬化する際に水とセメントの反応(水和反応)によって、水酸化カルシウム(Ca(OH2))が生じるためp高いアルカリ性を示します。このアルカリ分は鉄筋コンクリート構造中の鉄筋の表面に不動態被膜という保護膜を作り、鉄筋の腐蝕を防いでいます。ですが、空気中の二酸化炭素がコンクリート表面から徐々に内部へ浸透することでコンクリートの炭酸化が進み、アルカリ性も失われ中性に近づいていきます。これがコンクリートの中性化と言われ、アルカリ性が失われることで鉄筋表面の不動態被膜が破壊され鉄筋腐食(錆の発生)が起こります。

★塩化物の浸透によるひび割れ コンクリート中に鋼材の腐蝕が塩化物イオンの存在により促進され、鋼材の腐蝕で生じた錆によって体積膨張が起こり、コンクリートにひび割れを引き起こす現象のことをいいます。また、ひび割れが生じると酸素と水の供給が容易となり腐蝕は加速され、かぶりコンクリートの剥離、剥落や鋼材の断面減少などにより、構造物の耐力低下に至る場合があります。密実なコンクリートは高アルカリ性を示し、コンクリート中の鋼材の表面には緻密な不動態被膜が生じるので、一般に鋼材は腐蝕しにくくなっています。

★疲労によるひび割れ コンクリート材料のもつ強度より低いレベルの荷重作用を繰り返し受けることによって生じるひび割れのことを指し、これを一般的に疲労損傷または疲労破壊と言います。疲労によるひび割れは、主に道路橋床板に見られるひび割れですが、コンクリートのひび割れのみならず、道路橋の構成材料である補強鋼材(鉄筋やPC鋼材等)に亀裂を生じさせ、部材の性能低下を引き起こし、最終的には通常の荷重作用下において破壊に至ってしまいます。

2019/4/19
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