アルカリシリカ反応
アルカリシリカ反応とは……
アルカリシリカ反応はコンクリートにおける劣化現象の一つです。コンクリートに含まれるナトリウム・カリウムなどのアルカリ金属イオン(アルカリ性細孔溶液)が、骨材(砂利や砂)の中にある特定の鉱物と反応し、異常膨張を起こしてコンクリートにひび割れを生じさせます。
劣化現象として、コンクリート表面に方向性の見られないひび割れが発生するほか、白色のゲル状物質がひび割れからにじみ出ている場合があります。ただし、実構造物においては、内部の応力状態や補強筋の配筋状態がひび割れに影響を与えるため、ひび割れの発生症状のみでアルカリシリカ反応であると特定することは難しいとされています。
アルカリシリカ反応によるひび割れ
アルカリシリカ反応によるゲル状物質の滲出
以下の条件を満たすとアルカリシリカ反応が進展すると言われています。
- 骨材中に限度量以上の反応性鉱物
- 水酸化物イオン濃度の高まり
- コンクリート内部湿度が80から85%
現在、アルカリシリカ反応を試験する方法として、化学法・モルタルバー法が規定されていますが、完全なものではありません。
アルカリシリカ反応によるひび割れ
ひびわれ例1
ひびわれ例2
ひびわれ例3
ひびわれ例4
ひびわれ例5
ひびわれ例6
アルカリシリカ反応の予防
アルカリシリカ反応の予防には以下のようなものがあります。
- 1.無害骨材を使用する。
- 2.高炉セメント・フライアッシュセメントなど混合セメントを使用する。
- 3.コンクリートアルカリ総量の規制(Na₂O換算 3.0㎏/㎥以下)
アルカリシリカ反応への対策
日本においては、1980年代にアルカリシリカ反応が問題化したことを受けて調査・研究が進み、1989年には骨材中のシリカ分の含有量を制限するなど抑制対策がJISに明記され、それ以降の新設構造物ではほぼ見られなくなりました。
しかし、1970年代・1980年代に施工されたコンクリート構造物では、経年によりアルカリシリカ反応が進行している構造物が多々見られます。これらの構造物に対しては、劣化の進行状況に応じ、以下の対策が取られています。
抑制対策
アルカリ骨材反応は劣化の進行速度が遅いことから、水などの劣化を早める因子を抑制して、構造物の延命を図る方法があります。具体的には、ひび割れ注入やコンクリートの表面塗装です。また、アルカリシリカ反応抑制剤を注入する工法があります。この抑制剤は主成分のリチウムイオンにより骨材周囲のアルカリシリカゲルと吸水膨張剤を消失させ、以降の劣化を抑制するものです。
膨張に対する拘束
異常膨張を起こすアルカリシリカ反応構造物に対し、外部を鋼板やFRP、プレストレスト・コンクリートなどにより拘束して膨張を止め、圧縮応力として内部に閉じこめる方策です。コンクリートは引張りに対しては弱い反面、圧縮には強いため、膨張量によっては効果が発揮されます。
断面補修・補強
アルカリシリカ反応による劣化が進行し、終息に至った構造物に行われます。劣化の生じたコンクリート部分を除去して、新しいコンクリートに打ち代えたり、鋼板やFRPにより断面の補強を行うなどの対策が取られます。
アルカリシリカ反応の今後の課題
アルカリ骨材反応に対する調査・研究は1980年代に活発に行われましたが、予防対策が明文化されるとともに関心が薄れ、以降は主として劣化対策の研究のみが進んできました。しかし近年になり、異常膨張を起こした構造物の鉄筋破断事例が続々と発見され、新たな注目を浴びています。鉄筋破断に至ったアルカリシリカ反応構造物の特性については未解明な部分も多く、その実態調査とともに、メカニズムの解明や対策手法の確立が急がれています。